山口百恵さんを考える

現役大学生が山口百恵さんについて考えます。

9曲目夏ひらく青春

「夏ひらく青春」

1975年6月10日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング4位

https://youtu.be/RzreGXm1Rf4

1つ前のスローテンポの「湖の決心」とは違い、短調(ト短調)のアップテンポの曲です。何かに迫られているようなイメージを持つ前奏から始まります。

夏ひらく青春という題名。意味がわかりそうでわからないですよね。歌詞に注目すると

恋という名前の夏の花

1つ結ぶ1つひらく

めくめくる光の中で

ここに注目すると

輝きまくってる青春の夏には、1つの恋が始まったり、終わったりしてるよ

という意味に捉えることができます。

つまり、この曲は恋の終わりを告げてる曲なのです。今まで初恋の歌が連続していた山口百恵さんですが、16歳になって、とうとう最初の恋を終わらせてしまったようです。

それを裏付けるのが、

「いい人に会うことが怖いの、辛いの」という部分

新しい恋に進んで、今までのあなたとの思い出も消えるかもしれないのが嫌だ。

そんな歌詞です。

別れの曲は悲しそうな歌詞が並ぶはずですが、

光の中で

これがあるのも面白いですね。

色々あっても、青春ってキラキラしてる。そんな感じが伝わってきます。

それに加え、最初に述べたように、迫られるようなアップテンポ。

青春の夏はあっという間に終わっちゃうよ。というメッセージを感じることもできますよね。

あ〜10代に戻りたい。

【今日のまとめ】

・初恋終わる

・青春は色々あってもキラキラ

・10代の青春はあっという間

8曲目湖の決心

「湖の決心」

1975年3月21日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング5位

https://youtu.be/zVenDi5c6Dg

青い性路線から季節路線を経て、今まではずっと上り調子でしたが、ここで一回迷走期を迎えます。前回の冬の色1位からの5位。期待値が大きいだけに5位が低く感じてしまいますが、5位でも実際は十分凄いことに変わりはありません。

いつも通りの短調(嬰ハ短調)の暗い雰囲気で、少々遅いメロディが主体です。 そして、この頃の流行りかはわかりませんが、「運命を信じますか?」という歌ではなくセリフから始まります。

セリフから始まる曲は、 山口百恵でいったらほかに 「少年の海」

https://youtu.be/lRyf1oS0aZc

桜田淳子の 「花物語」(1973)

https://youtu.be/NaQgfrOqICw

などが思い浮かびます。

これらに共通していることが、湖、海、花といった「自然」とわたし、あなたといった「人」を結びつける、思い浮かびやすくするためにしている節があります。

https://sp.uta-net.com/song/13422/

【舞台】 湖

山口百恵の歌では珍しく舞台が湖である。 今まで海はありましたが、湖になったことは実は重要で、横須賀出身の山口百恵と海は結びつけやすいが、湖はどうしても結びつけずらいのです。そのため、どうしても空想の世界、厳密にいえば全ての曲はそうなのですが、より抽象的な世界観になることがわかります。

【キーワード】 好意以上の何か=好き以上の愛

主人公の少女は、あなたを愛している

それに関して、

心が乱れる、危険なこと、泣いている、と不安を抱えている

歌のテーマが未知の恋愛である初恋であることがわかります

この時に16歳になっていた山口百恵。デビューが14歳なので、2年前から初恋について歌っていたことになります。つまり、2年も経てば、そろそろわかるだろ。同じことばっかり繰り返しすぎだろと私は感じました。そのため、もうそろそろ、大人へのステップを踏み出すべき時なのかもしれません。

【今日のまとめ】

・迷走期に突入

・湖は山口百恵に合わない

・もうそろそろ初恋は良くね?

7曲目冬の色

「ひと夏の経験」

1974年12月10日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング1位

https://youtu.be/syqN8DUfAAk

初期の頃の山口百恵は「青い性路線」が注目されることが多いです。しかし意外にも初めてオリコン週間ランキング1位を取った曲は、「青い性路線」直後の7枚目のシングル「冬の色」なのです。

この曲は、「春風のいたずら」から続く季節路線の最終曲で、短調(ト短調)のゆっくりしたテンポは今までの曲と比べると落ち着いた地味な印象を受けます。

歌詞は「あなたから許された」「あなたから頂いた」「あなたなら他の子と遊んでるとこを見つけても待つことができる私です」と愛する男を想う少女の純愛がテーマです。山口百恵が演じる主人公の女の子は、相手の男に許しを請い、謙譲語を使い、浮気すらも許しています。この世界観は男にとっては理想の、都合のいい女像といえるのではないでしょうか。この男尊女卑の世界観の原因は、女性アイドルは男性ファンの疑似恋愛対象であると考えられているため、歌詞のターゲットを男性をにしているからです。そのため女性アイドルは、いかに理想の彼女になれるかが求められました。そのため恋愛禁止を掲げたり、恋愛スキャンダルが発覚するとバッシングを浴びるのです。

しかし山口百恵の場合、他の女性アイドルと違い男性ファンよりも女性ファンの支持が大きいと言われています。その理由の1つが冬の色の1位なのです。曲調も歌詞も地味なこの曲がヒットした理由は、「青い性路線」の頃から存在した山口百恵の隠れ女性ファンが、この路線の終わりと共にレコードを買ったからではないでしょうか。

「青い性路線」の性を連想させる刺激的な歌詞は、好奇心旺盛な男性が喜びそうな内容です。それによって、山口百恵は話題になりテレビへの露出も増えて知名度も上がりました。しかし、山口百恵本人は「蒼い時」において、「「青い果実」の歌詞を初めて見たとき「こんな詞、歌うんですか」言ったか言わなかったかは、さだかではないが、口に出さないまでも、気持ちは完全に拒否していた」と自叙伝の「蒼い時」で語っています。このような山口百恵の反応から、仮に同世代の少女が山口百恵に興味を持った場合、このレコードを買う人は少ないと考えられます。クレームが来るほどの歌詞であるため、親や周りから何か言われるのを恐れてレコードの購入を躊躇する可能性は高いはずです。一方で「冬の色」は何の当たり障りもない歌詞です。

つまり、隠れていた山口百恵ファンの少女が、やっと躊躇することなくレコードを買うことができたから、「冬の色」は1位になったのではないでしょうか?

【今日のまとめ】

・冬の色は初の1位

・歌詞は地味

・女性からの支持を集めている証拠

6曲目ちっぽけな感傷

「ちっぽけな感傷」

1974年9月1日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング3位

https://youtu.be/fGNwzw2YXXk

この曲も前回に続き、短調(ハ短調)とジャケ写に笑顔がない形は継続しました。

その一方で、受け継いでいない点も2つあります。1つ目は、青い性路線ではなく、普通の恋愛ソングになったことです。性的なことを連想させる言葉や場面は全くなく、恋人と喧嘩した少女の心を歌った歌詞になっています。今まで、初恋の初々しさを感じることができる歌詞が多かったので、しばらく関係が続いた挙句、喧嘩をするといった山を迎えたのでしょう。2つ目は季節路線から外れたことです。春風のいたずら→ひと夏の経験、春→夏と続きたので、秋に関係する歌かなと思わせておいて、季節感がない曲が発表されました。 「山口百恵 赤と青とイミテーションゴールドと」という本によると、プロデューサーは裏切りをテーマにしていたそうです。今までなら、アイドルにはタブーの性を連想させる曲を歌わせたり、短調にしたりといった感じです。つまり、この曲も新たな「裏切り」の形として、季節路線から外れた曲にしたそうです。

http://j-lyric.net/artist/a0013c2/l0066ea.html

【気にな言葉】 なぜ愛されちゃいけないの

→愛することができない。ならわかりますが、受け身である愛されることを否定しています。

【主人公の願望】 あなたを嫌いになりたい 私を憎んでほしい 今すぐに消えて私の目の前から

→自暴自棄。なぜなら、このまま続くと二人は全てを無くしてしまうから。2人のためにも恋人であり続けることはやめたほうがいいことに気づきました。

これらを踏まえると、なぜ愛されちゃいけないかがわかります。それは、私と恋人関係になると不幸になるよと自暴自棄になってるから、思いついた言葉なのです。

この心境の歌詞。男ウケするのでしょうか。私はそんなしないと思いますが、オリコン3位と高めなのが興味深いところです。

【今日のまとめ】

・2つの継承と2つの裏切り

・自暴自棄

・スタンスを変えても順位は良い

5曲目ひと夏の経験

「ひと夏の経験」

1974年6 月1日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング3位

https://youtu.be/i-x_lP6e228

いつも通りの暗い雰囲気のト短調のメロディ。青い性路線の集大成であり代表的な曲です。「あなたに女の子の1番大切なものをあげるわ」という特徴的な歌詞は、芸能記者からの標的となりました。百恵ちゃんにとって、大切なものはなんですか?と。

山口百恵はその質問があるたびに、「まごころ」と答え続けてきました。一方で、自叙伝の「蒼い時」では、「処女とでも言って欲しかったのだろうか」と記載しています。この時点で、プロデュース側や本人が否定したところで、性的なことを連想してしまうことは否定できません。あまり笑わない不器用そうな15歳の少女が歌ったからこそヒットしたのであって、他の歌手や現代にこの曲が発表されたら、それこそ炎上案件になるでしょう。

それでは、なぜ山口百恵はそれが世間から許されたのでしょうか?プロデュースする側からしたターゲット層は、アイドルを疑似恋愛対象とする男性だと考えられます。私はこれとは違う層にも、ウケたのではないか?少なくとも自分がリアルタイムで70年代に生きていたら、それを理由に応援します。それは、滲み出る懸命さです。 いつも笑顔のアイドルに対して、私は「可愛い」「プロ意識が高い」「メンタルが強い」という印象を持ちます。一方で、真顔だと、「心配になる」「素直」「芯が強い」と感じます。山口百恵はどちらかというと歌う時にあまり笑わないので後者です。真顔で性的な歌を歌う少女を、自分の意思に反した歌を大人から歌わさせられて頑張っている女の子と変換します。その目線でもう一度歌ってる映像を見てください。時々頑張って笑顔を見せようと試みようとしたり、「誰でも一度だけ経験するのよ〜誘惑の甘い罠」のところで、人差し指を使った初めて振り付けを加えています。不器用そうだけど一生懸命頑張ってる。応援したくなる。そんな気分にかられます。 アイドルはいろんな魅力があると思いますが、「その人自身を応援したくなる。」これもファンである大きな理由の一つなのです。

http://j-lyric.net/artist/a0013c2/l005a17.html

【季節】

ひと夏の経験という題名にも関わらず、夏の季語が全く使われておらず、情景のイメージが湧きにくいと思います。ひと夏よりも経験に全振りしています。

【人物像】

登場人物が女の子だけ。女の子の気持ちを表明する歌詞です。今までの歌に出てくる女の子像は、か弱い女の子でした。しかし、この歌の主人公はそうとも言い切れません。

愛する人に捧げるため守ってきたのよ」「愛する人が喜ぶならそれで幸せよ」と今まで恋人のために全力モード、彼との「愛」を継続させるためにだったら何でもしてやるという覚悟を感じます。この覚悟、私は主人公が幼いながらにも強いのではないかと思います。

少しながらでも主人公の成長をも感じさせてくれ、感動をも覚えます。この感情を抱く時点で、山口百恵の歌の歌詞の主人公と歌う本人を重ね合わせてしまうという、「私小説」路線を裏付けることができます。

【今日のまとめ】

・青い性路線の集大成

・滲み出る頑張ってる感

・主人公が成長している

4曲目春風のいたずら

「春風のいたずら」

1974年3月1日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング11位

https://youtu.be/MWk42BUlspg

この曲は「青い果実」「禁じられた遊び」と2曲続いた青い性路線と違い、普通の恋愛歌です。ただし、やっぱり踏襲してることが短調であることです。この曲もト短調です。

リンクを貼ったYouTubeの動画を見ればわかりますが、ほぼ無表情で、踊りもダンスもなく、同じ体勢で歌い続けていることがわかります。これはプロデューサーから言われたのか本人の意思かはわかりません。現在のアイドルは歌いながら踊りや振りが あることがほとんどだと思います。これを踏まえて、私はアイドルはなぜ踊るのかという疑問がわきました。アイドルは顔が整っている、歌がいい、歌詞がいい、踊りがいい、衣装がきれい、表情がいい、面白いなど歌に対して多くの付加価値をつけることができます。最近のアイドルは、これらのほとんどをフル活用しており、好みの多様化に対応していると私は考えます。一方で、山口百恵は現在のアイドルよりも付加価値の種類が少ないことがわかります。ということは、一つ一つに対する割合が必然的に大きくなり、歌い方や歌詞にファンも自然と重点を置くことになります。例えば、曲調が良い、歌詞がいい、踊りが上手い、一生懸命さが伝わる、ブログが面白い、の5要素が売りのアイドルがいるとします。そうすると100点満点で考えるとファンの評価項目はそれぞれを均等に割り当てると20:20:20:20:20になります。一方で山口百恵は、曲調が暗い、歌詞がいい、表情がいいの3要素が初期の頃の売りでした。これは33:33:33+αと一つ一つに対する評価点が高くなることがわかります。つまり、現在のアイドルよりも歌詞をよく見られている、重点を置く必要があるのです。

アイドルは、付加価値をつければつけるほど好みが分散化して、付加価値をなくせば好みが限定的になる性質があります。

http://sp.utamap.com/showkasi.php?surl=F01774

【女の子の人物像】 寒いわ、怖いわ、の連呼。つまずいて、よろめいて、とフラフラな状態→弱い女の子

【季節】 もちろん題名からして春。しかし、春は暖かいイメージを持つはずなのに、寒さをあらわすフレーズが多い。(寒いわ、風が吹く)主人公の女の子は「こんな時こそあなたにいてほしい」と連呼している。→春の暖かさと彼の温かさをかけているともいえる。主人公のか弱い女の子は、春と彼のあたたかさを待ち望んでいる。

歌詞のメインテーマは、青い路線から変更しているものの、主人公は相変わらず、弱い女性です。男に忠誠を誓っています。やっぱり恋愛至上主義者で、男と喧嘩しただけでフラフラになるメンヘラというイメージです。この主人公が現在に生きているのなら、むちゃくちゃSNSに病みツイートしているのが想像できます。つまり、当時はメンヘラがウケると考えられていた時代であることがわかります。今の若者からすると、めんどくさいというイメージを持つので、この歌詞はあまりウケない気がします。当時だったから受け入れられた考え方の歌詞だと思います。

【今日のまとめ】

・踊らないから歌詞が見られる

・青い性路線からの転換

・やっぱり、女性像は弱めのメンヘラ

3曲目禁じられた遊び

禁じられた遊び

1973/11/21発売

週間オリコンランキング12位

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

https://youtu.be/AiYW7U8DPvY

この曲は「青い果実」の路線を完全に受け継いでいます。曲調はト短調で暗め。歌詞は青い性路線を受け継いでいます。

なんでアイドルなのに暗い曲調が続くのか?その疑問は歌ってる時の表情にあります。リンクに貼ったYouTubeの動画を見てください。どこかぎこちない笑顔、または真顔なんです。満面の笑みで「怖くない怖くない。あなたとだったら何でもできる」と言われたら、むっちゃ怖くないですか?魔性の女でしかないですよね。比較できるように、同じ年の桜田淳子の「わたしの青い鳥」のリンクを貼っておきます。

https://youtu.be/A3IIDxcNMbE

桜田淳子山口百恵森昌子花の中3トリオを組んでおり、同世代のアイドルとして比較してみると違いがわかります。ちなみに、よくライバル関係にあるとメディアで書かれるけど、山口百恵桜田淳子のことを親友であると自叙伝「蒼い時」で語っています。

歌詞については、青い性路線の曲は、男性にとって理想の女性像と考えてきました。それに加えて、断らない女性、従う女性というのも加えたいです。そんな男女カップルは亭主関白の家庭を築くのでしょうか。当時は良かったかもしれないけど、今は、男の私でもこの世界観はなかなか理解し難いです。山口百恵は可愛いけど。

可愛けりゃ何を言ってもいいのは、確かに間違いありません。でも、それは短期的であり、いつかは限界がきてしまう気がします。だから、自分の世界観を人に共感してもらうことが歌で重要なことだと思うのです。

満面の笑みで歌わないと、どういう印象を持ちますか。私はこの顔どっかで見たことあるなと以前から思ってたのですが、最近ようやく何かがわかりました。それは、陽キャラがグイグイ来るのを断れずに、なんとも言えない顔をして我慢してる人です。

ということは、一つの仮説が立ちませんか?この路線の曲には、理想の女を求める男性群の他に、「あ〜百恵ちゃん。わかるわ〜。笑えねえよなあ。断るのむずいよなあ」と共感してる女性にも需要があるのではないかと。いつも笑顔でいるより、正直な表情の方がウケることと思います。

【状況】

生まれて初めて人を愛して→初恋

【あなたの後ろにつく歌詞] 何でもできる、何処でも行ける、何でも捨てる、秘密は守る、何でも耐える、何でも捨てる

何でもできる→わかる、何処でも行ける→わかる、何でも捨てる→???

この急展開。狙いすぎだろと思います。それも踏まえて、まるで初恋は修行かのような書き方。なかなか共感できません。

【今日のまとめ】

・曲調=歌詞=山口百恵

・女性ファンいそう説

・初恋は修行