山口百恵さんを考える

現役大学生が山口百恵さんについて考えます。

5曲目ひと夏の経験

「ひと夏の経験」

1974年6 月1日

作詞:千家和也

作曲:都倉俊一

週間オリコンランキング3位

https://youtu.be/i-x_lP6e228

いつも通りの暗い雰囲気のト短調のメロディ。青い性路線の集大成であり代表的な曲です。「あなたに女の子の1番大切なものをあげるわ」という特徴的な歌詞は、芸能記者からの標的となりました。百恵ちゃんにとって、大切なものはなんですか?と。

山口百恵はその質問があるたびに、「まごころ」と答え続けてきました。一方で、自叙伝の「蒼い時」では、「処女とでも言って欲しかったのだろうか」と記載しています。この時点で、プロデュース側や本人が否定したところで、性的なことを連想してしまうことは否定できません。あまり笑わない不器用そうな15歳の少女が歌ったからこそヒットしたのであって、他の歌手や現代にこの曲が発表されたら、それこそ炎上案件になるでしょう。

それでは、なぜ山口百恵はそれが世間から許されたのでしょうか?プロデュースする側からしたターゲット層は、アイドルを疑似恋愛対象とする男性だと考えられます。私はこれとは違う層にも、ウケたのではないか?少なくとも自分がリアルタイムで70年代に生きていたら、それを理由に応援します。それは、滲み出る懸命さです。 いつも笑顔のアイドルに対して、私は「可愛い」「プロ意識が高い」「メンタルが強い」という印象を持ちます。一方で、真顔だと、「心配になる」「素直」「芯が強い」と感じます。山口百恵はどちらかというと歌う時にあまり笑わないので後者です。真顔で性的な歌を歌う少女を、自分の意思に反した歌を大人から歌わさせられて頑張っている女の子と変換します。その目線でもう一度歌ってる映像を見てください。時々頑張って笑顔を見せようと試みようとしたり、「誰でも一度だけ経験するのよ〜誘惑の甘い罠」のところで、人差し指を使った初めて振り付けを加えています。不器用そうだけど一生懸命頑張ってる。応援したくなる。そんな気分にかられます。 アイドルはいろんな魅力があると思いますが、「その人自身を応援したくなる。」これもファンである大きな理由の一つなのです。

http://j-lyric.net/artist/a0013c2/l005a17.html

【季節】

ひと夏の経験という題名にも関わらず、夏の季語が全く使われておらず、情景のイメージが湧きにくいと思います。ひと夏よりも経験に全振りしています。

【人物像】

登場人物が女の子だけ。女の子の気持ちを表明する歌詞です。今までの歌に出てくる女の子像は、か弱い女の子でした。しかし、この歌の主人公はそうとも言い切れません。

愛する人に捧げるため守ってきたのよ」「愛する人が喜ぶならそれで幸せよ」と今まで恋人のために全力モード、彼との「愛」を継続させるためにだったら何でもしてやるという覚悟を感じます。この覚悟、私は主人公が幼いながらにも強いのではないかと思います。

少しながらでも主人公の成長をも感じさせてくれ、感動をも覚えます。この感情を抱く時点で、山口百恵の歌の歌詞の主人公と歌う本人を重ね合わせてしまうという、「私小説」路線を裏付けることができます。

【今日のまとめ】

・青い性路線の集大成

・滲み出る頑張ってる感

・主人公が成長している